ヒメシャガ

 

姫射干 アヤメ科 アヤメ属

Iris gracilipes A.Gray

日本固有種  準絶滅危惧 (Near Threatend)

ヒメシャガ  2012.06.24 alt=1340m
 2012.06.24 群馬県 alt=1340m

 

 ロープウエイで一気に高度を稼ぎ、降りたらそこに咲いているという、楽ちん花さんぽでした。 ヒメシャガは全体の姿がシャガに似ていますが、ずっと小型で、可愛らしく気品があります。

 

 花のホームページなので書こうか書くまいか迷ったのですが、正直に書いてしまうと、シャガは好きではありません。 なぜかと聞かれるとそれは感性の問題になるのでしょうが、花になんとなく毒々しさを感じ、群れてはびこることが多いからかも知れません。 以前東京の高尾山の6号路という散策路を歩いたときは、路傍に延々とシャガが咲き続け、狭く混雑した道をトレイルランナーと称する輩が大勢駆け下りて来たりしたので、花と人の両方に辟易してUターンして帰ったことがあります。

 

 シャガには何の罪もないのですが... やっぱり昔から好きじゃない。 そのシャガに似たヒメシャガ。 しかしこの花は可愛い! シャガに似ていると言っておきながらですが、印象はずいぶん違いました。

 

ヒメシャガ  2012.06.24

 

 上の写真のような規模の固まりが多く、日当たりのよい草地や岩石地に点々といました。 茎の高さは30cmほど。 図鑑には「やや乾燥した林内や岩上に生える」とありましたが、開けた草地や沢沿いのやや湿った場所にもいました。 しかし、園芸用の採集で数を減らしているそうです。 違法な採集は絶対にやめてほしい(国立公園の外でもね)。

 

ヒメシャガ  2012.06.24

 

花だけ見るとシャガよりアヤメに似ている感じです。

日本の山野の風景に似合う花です。 常緑のシャガと

異なり、夏緑性なので秋には葉が枯れるそうです。

 

ヒメシャガ  2012.06.24

 

シャガとはまったく違う花色です。

形も色も均整がとれて、とても美しい。

 

大きく、網目模様があり、中央部に黄色の斑紋があるのが外花被片で、萼に相当するものです。 その半分ほどの大きさで、網目模様がないのが内花被片で、これは花弁に相当します。

 

花柱は大きく3裂します。先端部は細かく裂けますが、この角度からでは見えにくいです。 雄しべは花柱の下に沿うようにいるので、真上からではまったく見えません。

 

ヒメシャガ  2012.06.24

 

 少し角度を下げてみました。 花柱は平たく花弁状で、先端

が2裂し、更に細かく裂けている様子がわかるでしょうか。黄色

い部分がとさか状の突起になっているのも見えて来ました。

 

ヒメシャガ 2012.06.24

 

横からの姿もなかなかいいですね。

 

ヒメシャガ 2012.06.24

 

側面から。花柱先端部の細裂がよく見えます。左の写真の子房の位置はおおよそのものです。下はとさか状の突起の拡大。


ヒメシャガ 2012.06.24

 

 このとさか状の突起はシャガにもあり、ヒメシャガやイチハツとともに

Crested Iris(とさかのあるアイリス)と総称されているそうです。

 

ヒメシャガ 2012.06.24

 

この花は「とさか」が大きい!「とさか型」

というより、鈎型と言いたいくらいです。

 

 ところで、雄しべが明確に写っている写真はありませんでした。 けっこうたくさん撮ったのですが... 意識して撮ろうと思って撮っていなかったのがいけませんでした。 でも、わずかに雄しべの気配がわかる写真もあったので、無いよりマシと思うので下に掲載します。 トリミングして画質が悪いのはご容赦を!

 

ヒメシャガ 2012.06.24
ヒメシャガ 2012.06.24

 

花柱の影から、ちょこんと雄しべの先端が見えます。

 

ヒメシャガ 2012.06.24
ヒメシャガ 2012.06.24

 

かろうじて正面方向から見えた雄しべ。

 

 この日は他にナエバキスミレ、オオバキスミレ(たぶん)、ミヤマスミレ、ノビネチドリ、シラネアオイ、イワカガミ、ミクニサイシン、ミツバオウレン、タケシマラン、ヤマトユキザサ などの花を見ることができました。 大変気持のよい場所で、ぜひまた訪れてみたいと思います。

 

2012.06.30 掲載