7月3日(土) 渡良瀬遊水地
所要で足利市のHiroの実家に行くことになった。 しかしただ行くのではせっかくの休日がもったいない。 途中、渡良瀬遊水地に寄ることにした。 この機会にかねてより参加したいと思っていたMOさん主催の植物観察会に参加すべく家を出たのだが、予想外の渋滞に巻き込まれ開始時間に間に合わなかった。 残念! 次の機会にはぜひ参加したい。
というワケで、いつものように二人で花さんぽを始めた。
ノジトラノオ
オカトラノオにそっくりであるが、茎の毛がオカトラノオよりずっと多いらしい。「らしい」と言うのも、その辺の特徴を知らなかったので茎の毛がわかる写真を撮っていなかったのだ。失敗した。 しかしもう一つの特徴である葉の幅は明らかにオカトラノオより細く、ノジトラノオに間違いないと思う。 ここではたった1株、咲いていた。
環境省RL 絶滅危惧ll類(VU)(危急)、栃木県RDB 絶滅危惧Ⅱ類(Bランク)。
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ハナムグラ
河川敷など湿り気のある草地に生える。 以前埼玉県の荒川河川敷で見つけたときも、周りに池というか沼のようなものが点在する場所だった。 「湿り気」といっても踏み込むと足が沈み込んでしまうような、時には冠水するような、かなり水気のある場所が好きなのだと思う。 葉は長楕円形で5〜6枚が輪生する。 先端部の針ははっきり見えるものはなく、何か小さなものが欠けて取れてしまったように、やや白くなっている。 この仲間としては花を多くつけるのでこの名がついた。
茎は4稜あり稜状に逆向きの刺がある。 葉の縁と葉脈状にも小さな刺があり、これで一緒に生える他の植物にくっつきもたれかかる。 上の写真は葉の縁の刺をアシに引っ掛けている姿。 右側の葉の手前の縁に細かな刺があるのが見えますか?(写真をクリックして拡大して下さい)
環境省RL 絶滅危惧ll類(VU)(危急)
ノカラマツ
日当りのよい草地に生える多年草。 高さ1mほどになりほとんど分岐しない。写真は撮り易いので倒れかけていた個体を撮影。
花序は細い円錐形で花は黄緑色。 この花には花弁がなく、萼片も早く落ちるので雄しべの葯が目立ち、花序全体が黄色に見える。
茎葉は羽状複葉で小葉は長楕円状のくさび形、先は3裂する。 しかし上部の葉は欠刻が少なくなり、2裂〜欠刻なしになっていた。 環境省RL 準絶滅危惧ll類(Vulnerable)
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アゼオトギリ
戦前は山間部の田のあぜ道や水田に隣接した湿地などで普通に見られたらしい。 群馬県、滋賀県、大阪府で絶滅。 他の多くの県でも絶滅寸前とのことである(山と渓谷社「レッドデータプランツ」より)。 葉の縁にはっきりとした黒点が多数ある。 葉の中央部にもあり、花弁の縁にも多い。 この株は草丈40cmほど。
環境省RDB 絶滅危惧IB類(近い将来絶滅の危険性が高い)。
今日はここまで出逢った花が全て絶滅が危惧される種で、まるで絶滅危惧種特集ですね〜。
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ネジバナ
上品なピンク色が好きです。 ねじれる方向が逆になる株は珍しくないが、この株は2本の花序が逆方向にねじれて咲き、きれいにシンメトリカルで、ちょっと珍しい?
オヘビイチゴ
ヘビイチゴに少し似る。 ヘビイチゴはヘビイチゴ属であるが本種はキジムシロ属。 下部の小葉は5枚なので3枚であるヘビイチゴと区別できる(上部の葉は少なくなり1〜3枚ほどになる)。 お初の花でした。
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ヌマトラノオ
オカトラノオと似ているようであまり似ていない。オカトラノオはやや乾いた草地に咲き花序は垂れ下がり、花を密につけるが、本種は湿地に限られ、花序は垂れ下がらず直立し、ややまばらに花をつける。 オカトラノオよりははるかに見ることが少ないと思うがどうでしょう?。 今回で2、3回目のご対面。
イヌゴマ
河川敷などの湿った場所に生える。あちこちで見ることができますね。
ミゾコウジュ
日のよくあたる明るく湿った場所に咲く。 シソ科アキギリ属で、キバナアキギリやアキノタムラソウの仲間であるが、仲間たちが秋に咲くのに対して本種は春の終わり頃に咲く。 写真の株はもう花期が過ぎており数個の花が残るのみだったが、あちこちに大きめの株があった。 環境省RDBでは絶滅危惧ではないが、絶滅危惧に移行する可能性のある種の「準絶滅危惧(NT)」に指定されている。
参考→絶滅危惧種
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ミゾカクシ(アゼムシロ)
田の畦や溝などの湿った場所に生える。 茎が地面を這い節から根をおろして増え、溝を覆い隠してしまうほど繁殖力の強い植物なのでミゾカクシ(溝隠)の名がある。
別名のアゼムシロも、田の畦に蓆(むしろ)を敷きつめたように広がるのでついた名。 キキョウ科だがキキョウとはずいぶん違った花の形。 小さな花だが、拡大してみるとなかなかカッコイイ花だ。
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ゴマノハグサ
両側にアシが茂った遊歩道を行くと、見慣れぬ花に出逢った。「なんだろう?さっぱりわからないね。ちょっとゴマノハグサ科っぽいけど」 帰って調べたら、ゴマノハグサ科ゴマノハグサ属のゴマノハグサだった。 おお!初めて見た! けっこう大きく、写真の株は高さ90cmほど。 ゴマノハグサ科(クロンキスト体系)の仲間は、ムラサキサギゴケ、クワガタソウ、クガイソウ...などなど非常に種類が多いが、本種は「ゴマノハグサの中のゴマノハグサ!」である。男の中の男!みたいな。 そう思うと緑色をした地味な花も、けっこうかっこよく見えて来る...ことはなかった。 なお本種も環境省カテゴリで「絶滅危惧Ⅱ類(危急)」に分類される、希少植物である。
今日は時間がなく駆け足で渡良瀬遊水地のごく一部を探索しただけであるが、これだけ多くの絶滅が危惧される植物に出逢えた。 珍しい植物に出逢えることは嬉しいが、絶滅が危惧される種がこんなに多いのは、嬉しくないことだな...。
渡良瀬遊水地のすぐ隣の池を、ハスが埋め尽くしていた。 あまり近づけないが、立派な花がたくさん咲いているのが見える。 オオガハスかな?
今回出会えた花たち(五十音順)
No. | 初 | 花 の名 | 漢字名 | 科名 | 属名 | 花期 (月 ) |
1 | ★ | アゼオトギリ | 畦 弟 切 | オトギリソウ | オトギリソウ | 7-9 |
2 | イヌゴマ | 犬 胡麻 | シソ | イヌゴマ | 7-8 | |
3 | ウシハコベ | 牛 繁縷 | ナデシコ | ウシハコベ | 4-10 | |
4 | ★ | オオガハス | 大賀 蓮 | ハス | ハス | 6-9 |
5 | ★ | オヘビイチゴ | 雄蛇莓 | バラ | キジムシロ | 4-5 |
6 | カタバミ | 酢漿草 | カタバミ | カタバミ | 3-12 | |
7 | ギシギシ | 羊蹄 | タデ | ギシギシ | 4-8 | |
8 | キツネノボタン | 狐 の牡丹 | キンポウゲ | キンポウゲ | 4-7 | |
9 | ケキツネノボタン | 毛 狐の牡丹 | キンポウゲ | キンポウゲ | 3-7 | |
10 | ★ | ゴマノハグサ | 胡麻 の葉 草 | ゴマノハグサ | ゴマノハグサ | 7-9 |
11 | ツユクサ | 露 草 | ツユクサ | ツユクサ | 6-10 | |
12 | トキワハゼ | 常葉黄櫨 | ハエドクソウ | サギゴケ | 4-11 | |
13 | ニガナ? | 苦 菜 | キク | ニガナ | 4-7 | |
14 | ヌマトラノオ | 沼 虎 の尾 | サクラソウ | オカトラノオ | 7-9 | |
15 | ネジバナ | 捩花 | ラン | ネジバナ | 5-8 | |
16 | ★ | ノカラマツ | 野 唐松 | キンポウゲ | カラマツソウ | 6 |
17 | ★ | ノジトラノオ | 野路 虎 の尾 | サクラソウ | オカトラノオ | 6-7 |
18 | ハナムグラ | 花 葎 | アカネ | ヤエムグラ | 6 | |
19 | ハンゲショウ | 半夏生 | ドクダミ | ハンゲショウ | 6-7 | |
20 | ミゾカクシ | 溝 隠 し | キキョウ | ミゾカクシ | 6-10 | |
21 | ミゾコウジュ | 溝香需 | シソ | アキギリ | 5-6 | |
22 | ヤブジラミ | 薮 虱 | セリ | ヤブジラミ | 5-7 |
花期については「渡良瀬遊水地の植物図鑑」(渡良瀬遊水地アクリメーション振興財団編)を参考にさせていただきました。
2010.07.15 掲載
2010.08.30 環境省レッドリスト2012年見直し版に従い、ノカラマツのカテゴリーを準絶滅危惧から絶滅危惧ll類にランクアップした。
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