8月4日 千畳敷カール p.3/3
朝はガスで視界は30m、景色を楽しむことはできませんでしたが、八丁坂に取り付いてしばらくした頃、急に晴れ始めました。 急な登山路を登ることに専念していて気付かなかったのですが、いつの間にか背後にはカールの雄大な景色が現れていました。 写真ではなかなか雄大さが伝わらないかも知れませんが、思わず歓声を上げたくなるなる風景でした。
数分に1度、短い時間、青空が垣間見えるような天候。 それでも宝剣岳や前岳の姿を見ることができ、Hiroも思わず笑みがこぼれます。 岩山はまるで覆い被さって来るような迫力です。
前夜の車中泊でのハプニングで寝不足のせいか、いきなり標高2600m以上に来たせいか、私Kenは足取りが重く、ゼーゼーハーハー息が切れます。 対してHiroは元気いっぱいで、すぐ引き離されてしまう。 Hiroは人間ドックで「肺年齢は18歳ですね!」と診断されただけはあります。
出逢えました、チシマギキョウ! 見たくても見れなかった花です。 やはり高山に来ないと見れない花は、一際清楚に見えてしまいます。 この過酷な環境を生き抜いて来た花達に、敬意を払いたくなります。 岩の割れ目に溜まった、ほんのわずかな土に根を張り、一生懸命花を咲かせていました。 良く似た花に、イワギキョウがあります。 チシマギキョウは写真でもわかる通り花弁の先端部に白い毛がありますが、イワギキョウにはありません。 また、チシマギキョウは横向きに花を付けますが、イワギキョウはやや上向きです。 そんなところから、慣れれば簡単に区別ができるらしいです。 イワギキョウも、いつか見てみたいものです。
ヒメウスユキソウは駒ヶ岳周辺の特産種で、世界中でここでしか見ることができません。 絶滅危惧Ⅱ類にも指定されている、希少な花です。 ウスユキソウの中では最も小型で、背丈は10cm程度。 過酷な環境で健気に咲く、とてもかわいらしい花です。 登山道から2、3メートル上に咲いているのを見つけました。 なんとしても撮りたい。わずかな岩の出っ張りに足を掛け、腕を伸ばして撮ります。 Hiroが撮影中、足場の岩が崩れて危うく転倒しそうになり、ヒヤッとしました。 花は見たいですが、ケガをしては元も子もありません。
後から写真をじっくり見て、妙な感じを覚えました。 花の形が、少し変ではありませんか? よく見ると、まるで2つの花がくっついたような咲き方をしています。 しかも2つの花は同じような大きさではなく、一方が大きく、他方は小さい。 理由は不明ですが、これがこの花の特徴なのかも知れません。 とにかく、こんな花に出会えたことに感謝です。
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タカネグンナイフウロとも初対面で感激! グンナイフウロの高山型。 アサマフウロ、 ハクサンフウロなど他のフウロの仲間はピンク〜赤紫ですが、この花は美しい濃い青紫色。 茎と花柄に開出毛と腺毛が多数あります。 良く見ると葉にも細かい毛が多い。 高山の厳しい環境で、霧や雲から水分を得るためでしょうか。
ハクサンイチゲは中部以北の高山で普通に見られるポピュラーな花だそうですが、見るのは初めてです。 茎の途中に柄のない葉が輪生し、そこから2〜5本の花柄が伸びて、白く清楚な花がつきます。 いかにも高山植物っぽい、豪華な感じです。 茎と葉には白い毛が生え、そこに細かな水滴が多数ついた姿が、また美しい。
ウサギギクは、直径5cmほどの大きめの花でした。 茎に向かい合って付く2個の葉が兎の耳に見えるのでこの名があるそうですが、言われればそう見えなくもないかな?
タカネツメクサの高さは5㎝ほど。葉は針形で小さく密生し、直径1.5㎝ほどの花を多数付けます。 花はやや閉じ気味でしたが、こういう小さく可憐な花が好きなので出逢えてよかったと思います。
野反湖で初対面を果たした、クロクモソウ。こんな高山にもいるとは、ちょっと意外でした。元気に咲いていました。
ハクサンボウフウもお初。小さな5弁の白い花から、先端が黒紫色の雄蘂が突き出します。花弁の先は深くへこみます。総苞片・小総苞片共にありません。
カイタカラコウの高さは70cmほどあり、ひょろっとしています。 舌状花は5枚しかなく、あっさりした印象の花です。 お初の花でしたが、たった1株しか、見ることができませんでした。 名の由来は甲斐(山梨県)に多く、根に芳香があることから宝香となったそうです。 タカラコウが名につく植物は他にオタカラコウやメタカラコウなどがありますね。
花には曲毛があるとされますが、遠くて確認できませんでした。 サクライウズは、トリカブトの仲間なので有毒植物と思われます。 サクライは人名、ウズは根から作られる薬の名です。
ミヤマリンドウは名の通り高山帯の湿った草地に生える多年草。高さは10cmほど。花冠は長さ1.5-2cmの筒状鐘形で、先は5裂します。 薄い青色が美しい。山頂駅近くの遊歩道脇で美しい姿が見られました。
ハイマツは森林限界あたりでよく目にする木ですが、花を見たのは初めてです。 これは雄花。 名の通り、地を這うように枝を伸ばします。
ウラジロナナカマドは紅葉の秋の山を美しく彩る葉の一つです。 7度かまどに入れても燃え残ることから名付けられたといいますが、燃やしたことがある人は「そんなことはないよ」と。
長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 2008年当時は1泊コースに足を伸ばし始めた頃。 所変われば花変わるで、行く先々でお初の花に出会えたものです。 『信州 初花さんぽ』2日目は、40種以上の植物を観察することができて、超充実の花さんぽでした。
写真掲載をしなかった種は、イワベンケイ(花後)、コウメバチソウ、ゴゼンタチバナ、ツマトリソウ、ミツバオウレン、ヤマハタザオ、ヤマハハコ、ヤマブキショウマなどがありました。
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最後に、山麓に降りた後に近くのスキー場のゲレンデで見つけたヌマトラノオを掲載しました。 この植物もなかなか出逢う機会がありません。
オリジナルレポート表紙
2015.04.26 掲載( 当時のレポートを基に作成し直しました )
2016.01.03 ヌマトラノオの写真を追加
ヌマトラノオが掲載されたページ
Dairy-Hiroダス
花さんぽ
みっちゃん (月曜日, 27 4月 2015)
「千畳敷カール」でチングルマを見たい。
私の夢でしたが、多分行くことができないことでしょう。
沢山の綺麗な写真をありがとうございます。
田舎の同級生の家で銘菓「ちんぐるま」を作っています。
子供の頃からの懐かしい響きの花の名前です。
HiroKen (木曜日, 04 1月 2018 20:50)
ぜひ行かれてみては? 少し費用はかかりますが、ゆっくり出掛けて菅の平の宿泊施設に泊まり、翌朝バスとケーブルカーで上がると非常に楽に行けますよ。 あるいは、初日の夕方にケーブルカーで上がってしまい、千畳敷駅に併設されたホテルに泊まり、体を高地に慣らして翌朝から散策という手もあります。 チングルマはすぐ目の前に大群落がありますよ!
(このコメントはリンクミスを修正して再入力したものです)