8月4日 千畳敷カール p.1/3
パァーン!パァーン!パァーン! 怖いほど静まり返る夜の山中の駐車場に、突然けたたましいクラクションの音が鳴り響く! ヘッドライトもハイビームでパカパカと点滅を繰り返す! 車が断末魔の叫び声を上げてるかのようです。
ここは中央アルプス駒ヶ岳下に広がる千畳敷カールへの入り口、駒ヶ根の「菅の平バスセンター」の広い駐車場です。 すぐそばまで山が迫り、暗い。 この先のロープウェイ乗り場の「しらび平」まで一般車は通行禁止なので、車で来た登山客やハイカーはここでシャトルバスに乗り換えるのです。 ハイシーズンは早朝から大変な混雑となるので、前夜に駐車場で車中泊し、朝一番のバスの切符を買う人が多いのです。
わたしたちもその計画で、トイレから遠くなく、照明が眩しくない場所に陣取りました。 300台は停められそうな駐車場には、50台ほどの車が思い思いの場所に停まっています。 大半は泊まりがけで山に登っている客の車で無人ですが、ところ所車内灯が灯り、車中泊していると伺わせる車も少なくありません。 時間は夜の9時。 都会なら宵の口ですが、朝の早い登山客はもう大半が就寝しつつあるようでした。 私たちも車の後部に寝床を作り、シュラフにくるまって寝入ったところだったのです。 そこにこの大音響のクラクションの連発です。
普段なら「もう〜!早く止めてくれよ〜」と不機嫌な声でつぶやいただけでしょうが、この時は少し事情が違いました。 クラクションを鳴らし続けているのは、自分の車なのです! 『盗難防止装置が作動しちまった!』瞬間的に状況を判断しましたが、初めてのことで慌てます。 後部座席から直接運転席に移ろうとしますが、メタボ腹が邪魔して通れない! それならと外に出ようとしたら、なぜか後部座席のドアがロックされて開かない! この時点で半分パニックです。 大音響のクラクションもライトの点滅も止まりません。 あちこちの車からは『何事か?』と次々と人々が降りて来ました。 ヤバいぞこれは! 体をくねらせ、半分さかさまになりながら、ようやく運転席に体をねじ込ませました。 とにかくエンジンをかけよう、エンジンをかければ警報装置は止まるはずだ! キーは? アレ〜?、キーがついてない!『キー取って、キー!』後ろのHiroに向かって叫びます。『どこ?ないよー!』 キーがどこかにいっちまったああ!! こりゃどうすっぺえ〜〜!?
長くなったのでこの辺で止めますが、こんなハプニングがあり、前夜の車中泊はとても疲れました。 2008年8月3日の夜、菅の台バスセンター駐車場で就寝中に叩き起こされたみなさん、しかも30分後にもう1回同じことで叩き起こされてしまったみなさん、ゴメンナサイ! 犯人は私でした。 車に乗り込んでから無線キーでドアをロックしたことで、盗難防止装置が「車内に侵入者がいる」と判断して作動してしまったようです。
上のストリートビューは、ハプニングがあった駐車場方向を見ています。
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翌朝は5時起床。 朝が苦手なわたしたちとしては、画期的に早起きだ! 『信州 初花さんぽ』2日目、気合い十分です。 天候はまずます。 駐車場はいつの間にか車が増え、登山客が集まって来ています。 洗顔や簡単な朝食を済ませ、6時前にシャトルバスの切符売り場に並びます。 6:15頃ようやく切符売り場が開き、ロープウェイ代込みの切符を買います。 大人一人往復3800円(2008年の情報です)。 安くはありませんが、楽して天上の花園に行けるのだから文句は言えません。 ロープウェイを使わなければ、おそらくわたしたちにはたどり着けない場所なのです。
標高1662mのしらび平までは、シャトルバスで35分。 狭く急勾配・急カーブが続く道でした。 もし一般車の走行を許可したら、大渋滞になるのは必至だと思います。 ロープウェイには待ち時間10分ほどで乗れました。 もしのんびりと9時頃来ていたら、2時間待ちになっていたかも知れません。 冗談抜きで、ハイシーズンにはそれほど人気の場所なのです。
50人乗りの大型ロープウェイは高低差950mをわずか7分半で駆け上り、標高2611mの千畳敷駅に到着です。 とうとうHiro憧れの地に到着です! 花さんぽ史上、最高高度でもあります。 あいにくガスが出て、視界は最悪。 期待した雄大な風景はさっぱり見えません。しかし、足下にはたくさんの花たちが咲いていました。 さっそく、花さんぽ開始! 見たい花に出会えるかな?
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ヨツバシオガマは、初対面の花です。 亜高山〜高山帯に咲く多年草。 高さは30〜50cmほど。 花弁上部が鳥のくちばしのように細長く伸び、印象的です。 濃い紅紫色が美しい。 シダのように細かく切れ込んだ葉が4枚づつ輪生します。 名の由来はこの葉も美しいので、「葉まできれい」⇒「浜できれい」⇒「浜できれいなのは、塩竈」となったとあります。 しかしなんだかこじつけみたいで納得できません。 塩を採るために海水をゴウゴウ煮立てる塩竈が「浜で美しいもの」なのでしょうか? それとも、塩竈に付いた塩の結晶が美しかったのかな?
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野反湖でも見慣れたエゾシオガマ。 クリーム色の花が渦を巻くように咲きます。葉は切れ込みません。 群生が見事でした。
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初めて見た瞬間「このスミレに似た花は何?」と思ってしまいましたが、歴としたスミレでした。 名にスミレと付かない唯一のスミレかも知れません。 側弁がピンと上に跳ね上がり、見慣れたスミレとは違った印象。 唇弁がとても長く、はっきり言って馬面。 いかにも高山に咲くスミレという雰囲気があります。 名の「駒の爪」は葉の形が馬の足形に似ているからと言いますが、まったくそのようには見えないです。 ここには良く似たタカネスミレという花もいるらしいのですが、出会えませんでした。
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高山植物の中では抜群の知名度と思われるチングルマの花が咲いているところを、実は見たことがなかったのです。 それを少し引け目に感じていましたが、ようやく見ることができました。 名の由来である、果実を付けた状態(稚児の風車(かざぐるま)⇒稚児車⇒チングルマ)は見たことがあったものの、花は今回が初めて! 登山道脇の見事な群生をたくさん見れて、大感激です!
草本と思っていましたが、実はバラ科の小低木。 木本なのでちゃんと年輪もあるらしいです。 白い5弁花ですが、多数の黄色い雄しべがあるため黄色っぽく見えます。 代表的な雪田植物。 雪が残る場所に咲きます。 花が終わると白い羽毛状の毛を付けた花柱が長く伸び、あの特徴的な姿になるのです。
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出会う花がことごとく初対面の連続で興奮気味です。 ミヤマアキノキリンソウは、低標高地に咲くアキノキリンソウの高山型亜種です。 非常によく似ていて、区別するのはなかなか難しい。 外見的にはアキノキリンソウの花序は縦に長く伸びてまばらに付く傾向がありますが、本種は茎の上部にまとまってつくようであり、端正な感じを受けました。 総苞片の数も違い、総苞片が3列のものが本種、4列のものがアキノキリンソウとなるそうです。
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初対面の花との出会いははまだまだ続きます! アオノツガザクラは、やや緑がかったクリーム色が美しい。 高山に生育する矮性常緑低木。 比較的遅くまで雪が残っている雪田の周辺などの緩やかな傾斜地に、群生していることが多いそうです。 壷状の花冠は6〜8mmで、つぼまった先が浅く5裂しています。
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